我が家の高2の息子の話
こいつ、3歳になっても満足に喋ることができなかったから、当時は随分心配したものだが、今は普通に喋っている
基本的には大人しく無口で、何事も楽しいんだか楽しくないんだかよく分からない奴だ
勉強は全くダメで、ひと頃この事でもかなり心配した(今更もう良しとしようか)
一方で、大して役にも立たないが尋常じゃない記憶力がある
もっと勉強に役立ててほしかったものだが
例えば家族でどこかに行った日付
どこそこ行ったのっていつだっけ、なんて問いには「何年生の時の〇月✖️日」なんて即答する
これはさりげないながら、大した才能だと思う
あとは県の形
日本地図パズルをやった訳でも、地理に興味がある訳でもないのに、何故か小さい頃からみんな知っている
どうせなら国旗とかも覚えりゃいいのにと思ったりするが、強要されて覚えられるものではないから仕方ないか(だったらとっくに勉強に生かしてるわな)
この前テレビを見ていたら「オスカー・ワイルド」というアイルランド作家の名前が出てきた
すると息子がボソッと「『ドリアン・グレイ』?」とつぶやいた
なんでこいつ知ってるんだろうと訊いてみると、何年も前に某テレビドラマで『ドリアン・グレイの肖像』のエピソードが出てきて、その時に俺が説明したらしいのだ(たぶん得意げに)
興味があるわけじゃないのに、そんな無駄な単品の知識が未整理のまま頭に詰まっているらしい
それらの知識は、果たしていつか役に立つのだろうか
親としては少し楽しみに思っているが、今以ってその時は来ていないようだ
中学校入学から陸上部に入って高校でも続けた
競技は長距離で、中学校の時は駅伝大会で2度「区間賞」を獲った
それまでほとんどスポーツなんかしていなかったから、大したもんだと思っている
小5まではポッチャリ体型だったが、小6から何故か急激にスリム化した
全くスポーツとは無縁だったから、息子の陸上に親は熱狂した
大会があれば休みを取って毎回応援しに行った
その息子が昨日、陸上部をやめた
3月頃から母親には、その気持ちを漏らしていたようだ
でも、もう少し頑張れ、と続けさせていた
辞めたい理由は、練習がキツいとか記録が伸びないとかいうものではない
他の部員と打ち解けられず、孤独感がつらいというのだ
イジメでもあったのかとも思ったが、どうやらそれは無いようだったから一安心だったが
人間関係は自分で克服していかなければならない部分が大きいので、その事は話しておいた
本人なりに頑張りはしたようだが、すぐそう簡単に解決といくワケがない
しかも幸か不幸かコロナ休校があったものだから、それ以上ほとんど何もせずに過ごしてしまった
それでも休校中も特に嫌がらずに自主トレをしていた
毎日15から20キロくらい走っていたのだ
続けるつもりなのかな、とこちらは思っていたが…
一昨日の晩に息子が急に、やっぱりやめる、と切り出した
もう少し頑張れ、とはもう言えないと思った
本人にはもう一択しかないのだ
初めは、せっかく頑張ってきた陸上をやめるのが残念だ、という気持ちがあった
しかしもうそんな事より、部活で誰とも打ち解けられず、ずっとひとりぽっちだったのかと思うと可哀想でならなくなった
そんな思いをしてまで部活を続けなくていいと思った
そして昨日、部活の先生に退部届けを出したという
本人スッキリしたのか、昨夜は笑ってよく喋った
クラスの仲の良い友達にも相談していたらしい(それもまた安心材料だ)
心なしか明るい表情になっていて、やめて良かったのかも、と思った
何かを克服した訳ではないから、これからの人生でまた同様の困難にぶち当たるだろうけども、あとは本人の努力次第だ
でも走ることは今後も続けるそうだ
他人にはどうって事ない問題なのに、それがどうしても難しいっていう奴もいるだろう
青春は必ずしもキラキラしてなくちゃならん、と言う事もあるまい
これでいいのだ