かつてはロック雑誌を熱心に読んでいて、高校生の頃などはとりわけ『フールズ・メイト』を愛読していた
後に何故かヴィジュアル系専門誌となってしまう『フールズ・メイト』だが、当時はニュー・ウェーブ専門誌として(’77年の創刊時はプログレ誌だったようだが)、イギリスのインディー・レーベル中心のレコード・レビューやインタビューなどが掲載されていて、田舎の高校生には大変に刺激的な雑誌であったのだ
もっぱら立ち読みばかりだったが、初めて買ったのは’83年4月辺りの号で、理由はEP-4というバンドのソノシートが付録だったから
確か’85年頃までは買って読んでいたけど、次第にロックへの関心が薄れてしまい立読みすらしなくなってしまった
で、ロックへの関心が復活するのは、それから約5年後の’90年辺りだったが、きっかけが何だったのかは覚えていない
しかしその頃ではロック雑誌を購読する事などなく、たまに立読みするだけ
主には『ロッキング・オン』と今は廃刊となった『クロス・ビート』の2誌で、『フールズ・メイト』はその頃どんな記事を載せていたのか記憶にすらない(まだヴィジュアル系専門誌にはなってなかったはずだが、立ち読みすらしてなかったのかも)
ところで、昔からロック誌というものは、同時代の流行バンドの記事を主に掲載していて、表紙を見るだけである程度は今どんな連中が流行っているのかが大体分かったものだ
俺が一生懸命レコード買って聴いていた頃も、ほとんど同時代バンドを聴いていたのであり、例外なのはビートルズ、ストーンズ、ドアーズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド位なものだった
若い頃は、とにかく現代的であらねばならないと思っていたし、またこの歳になって思うのは、ロックは時代的世代的制約があるものであって、そこが面白さでもあるという事だ
現在の俺はといえば、若い頃に好きだった音楽の他は、ロック史的関心からの選択で聴く事が多くなり、一方「最新」ロックには興味が無いし、知識すらも無い有り様だが
さて、今月号の『ロッキング・オン』の特集で「UKロック・アンセム100曲」というのをやっていたので、もしやと思って覗いてみたら…
嫌な予感は的中、1位はオアシス「Don’t look back in anger」だ
実に『ロッキング・オン』らしい選曲で、俺も割と好きな曲だけど…でも一体いつまでオアシスなんだろう
オアシスって、現在のアラフォー世代が主に支持するバンドじゃないのか
もちろん10代や20代でもオアシスを聴いている人は多いのだろうが、いくらなんでも20年以上前の歌が1位だなんて、あんまりなランキングじゃないだろうか
(ちなみに2位以下は、U2、コールドプレイ、デヴィッド・ボウイ、セックス・ピストルズなどで、上記の曲よりさらに古い曲もランクイン)
要するに俺が気付くのに遅かったという事だが、『ロッキング・オン』は今やアラフォー向けの雑誌になっていたんだなという事、つまり最早若い世代の読者はターゲットにしていないという事だろう
この1年の表紙を見てみると見事に昔の人ばかりで、オアシス、U2、ストーンズにピストルズなどで、オアシスはなんと2回も表紙を飾っていた
じゃあ今、若い人向けの洋楽ロック誌はあるのか
いや、そもそも洋楽なんか若い人に聴かれているのか
ひょっとして日本の若い層はもうイギリスやアメリカのロックなんて聴いていないのかもしれないし、あるいはヒップホップにそれが取って代わられたのかもしれない
ああ、知らぬ間に「ロック」は本当に死んでいた
と、終わる予定だったが、蛇足でもう少し
ここでジョン・ライドンよろしく「ロックは死んだ」と言ってみたが、意味するところは少し違う
もちろんオアシスや『ロッキング・オン』批判でもサラサラない
当然だ、ここでオアシスを批判するのはお門違いだし、『ロッキング・オン』にしたところで経営や編集方針に文句を言う筋合いも全く無い
俺が感じているのは、もっと社会的な問題で、例えば少子高齢化などが大きく要因としてあるのだろうという事
先に触れたアラフォー世代は団塊世代ジュニアでもあるワケだから、人口比率では結構なボリューム・ゾーンだ、とかね
ただそれ以上に思うのは、「ロック」の存在意義が変わったのかもしれないな、という事だ
ロックが「生き方」なのか「反抗」なのかは分からないし興味もないが、少なくともかつてはそれぞれの世代への強いリアルタイムのカウンター・カルチャーであった事は間違いないワケで、その強さが相対的に低下しているのだろうな、と考えざるをえない
だから、ロックが死んだというよりも、かつてのロックの役割が、終わったとまでは言わないまでも、変わったのかなって感じはする
俺のように古い世代にとってはロックこそが一番カッコいい音楽なワケだから、それは少し寂しいのではあるけれども、今の若い人にはもっと切実で、あるいはカッコいいものがあるのかもしれないな、と思ったりする昨今である