ぱらの通信

思い付きと思い込みの重い雑感集

80年代のDavid Bowie

先日実家に帰った時、物書き小屋に昔買った雑誌「宝島」と「フールズ・メイト」が一冊ずつ埃にまみれて落ちているのを発見(何故そんなところに落ちていたのかは不明)

手に取ってみると、それぞれ1983年(昭和58年)と1984年(昭和59年)の発行

どちらにも共通しているのはデヴィッド・ボウイのインタビューが掲載されている事だ

当時のボウイはかつてないほどの成功を収め、「メジャーなカルト」から「超メジャーなカルト」となっていた

ちなみに1947年生まれのボウイは30代後半に差し掛かったところだった

 

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右「宝島」1983年10月号  左「フールズ・メイト1984年12月号

 

 

ボウイの1980年代は、北朝鮮国営放送風のナレーションで幕を開けるアルバム『スケアリー・モンスターズ』から始まる

当時ロックを聴き始めたばかりの俺は、雑誌で見たボウイに対して「訳の分からんアートな人」程度の認識だったけど

ともかくこのアルバムはボウイの「奇跡の70年代」のピリオドとして知られている…筈 


David Bowie - Ashes To Ashes (Official Video) 北朝鮮風ナレーションの曲じゃないけど、代表曲のひとつ 

 

そして1983年は、大島渚の『戦場のメリークリスマス』への出演、また3年ぶりのアルバム『レッツ・ダンス』はメガヒットを記録、すぐさまワールドツアーを敢行するなど、世界を席巻した年となった

実家で見つけた雑誌の一冊は正にその真っ只中にあった頃のものだ

1984年のアルバム『トゥナイト』では、前作ほどではないにせよ大きく取り上げられ、大変な話題となった

もう一冊の方には、このアルバムリリース時のインタビューが載っている

 

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ところがボウイ株の下落は、その後の80年半ば過ぎより顕著になる

名実ともに天下を取った83年から、実は怪しい雲行きではあったのだが…

何しろそれまでのボウイは「メジャーなカルト」であった訳で、それが「単なるメジャー」に見えてきたからだ

何やらダンディなおじさんとなり、ファンの多くは戸惑い、また失望した

 


David Bowie - Modern Love (Official Video) なんだかんだ言いながら、これはカッコいい

 

このインタビューでのボウイは自信に満ちており、まさか自身のどん底時代がこれから始まろうとは全く予想もしていなかっただろう

読んでいる方も、何となく違和感を感じながらも、まさかあんな風になってしまうだなんて思いもしていなかった 

ボウイは更にその後、映画の主題歌を歌ったり、そればかりか映画『ラビリンス』に歌舞伎コスチュームで出演したりと、すっかり超メジャー・アーティストととして変貌を遂げ、ファンはますます戸惑う事となる

 

そして遂に1987年にボウイのキャリア史上、自他共に認める最悪のアルバム『ネヴァー・レット・ミー・ダウン』のリリースとあいなるわけだ(タイトルが皮肉だね)

モロにMTV的ムード満載のこの作品には、さすがの俺も「もうボウイは終わったな」と思わざるを得なかったし、「大きな成功を掴むとこうなってゆくんだな」と悲しくなったものだった

かのロバート・スミス(ザ・キュア)は「ボウイは『ロウ』(1976年)を出した後で死んでしまえばよかったのに」とまで発言している  


David Bowie ★Time Will Crawl ★Live ★ Rare ★ Rehearsal 1987 

 

その後、さすがにボウイも目が覚めてきたとみえて方向転換を模索しだす

そこで1989年には賛否両論のハードロックバンド、ティン・マシーンを結成

その頃のボウイはというと、輝かしいキャリアを誇った70年代の栄光という貯金がほぼスッカラカンとなり、もう終わったと誰もが思っていた頃だ

ティン・マシーンに対しても揶揄する向きは結構あった

 

当時の俺は音楽に興味を失っていたが、それでもボウイのアルバムは聴いていた

ティン・マシーンはそんなに悪くないとは思ったが、ボウイに求めるものはそんなシンプルなロックではない、とも思った

同様に『トゥナイト』も『ネヴァー〜』も、今聴くとポップでそんなに悪くないんだけど、誰もボウイにそんなポップさは求めていなかった

 

 

90年代に入って、ようやく本来のボウイらしさを取り戻す訳だが、それはかなり奇跡的な事柄だろうと思う

80年代半ばからの約10年間、ボウイは「アーティスト」としての魅力のカケラもない、単なるダンディで派手なおじさんだったのだ

でもあのボウイだったからこそ、奇跡と感じないだけのような気もする

 

後年、ボウイのインタビューで「80年代が戻ってきたらどうしますか」との問いに「胸いっぱいの愛で抱きしめるよ」と言った後で「でも服は燃やすね」と付け加えている

 

 

実家で見つけた古雑誌にたまたまボウイのインタビューが載っていたからブログに書いてみたけど…オチもマトメも考えてなかったのでこれにて終了

そして今回どう考えても長すぎる感じがするけども、せっかくだから投稿…