ぱらの通信

思い付きと思い込みの重い雑感集

アンドレ・ジッド 『コリドン』の読了記念に

アンドレ・ジッド(ジイド)の『コリドン』を読んだ

なんとこの本、昭和9年発行である

俺が持ってる本では一番古い

横書きは右からになっている

 

余談ながら、いつ頃から現在の「左から横書き」に落ち着いたのだろうか

そもそも何でまた、「右から横書き」だったんだろう

縦書きが右からだから、横書きも右からという理由だったのか

 

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ドイジ・レドンア

 

 

収録作品は下の通り

目を引くのは『田園交響楽』の訳者が、堀辰雄神西清の共訳となっている事と*1中原中也が訳者の一人に名を連ねているところか

 

俺は『コリドン』目当てで購入したのだったが、その他の作品もなかなか興味深い

読んだことのある『田園交響楽』ですら、そんなに面白いとは思わなかったにもかかわらず、堀辰雄との共訳だというだけで再読したいくらいだ

 

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実はこの本を買ったのは俺がまだ二十歳を過ぎたばかりの頃で、今からもう30年以上も前の事だ

東京は三鷹駅前の古本屋「下田書店」で購入という事が包み紙で分かる

 

三鷹には友達が住んでいたので、そいつのところへ遊びに行った帰りに買ったのだ

そいつはその後、東中野に引っ越していて、そっちによく行っていたので、てっきり東中野の古本屋かと思っていた

いや、むしろそいつが三鷹に住んでいたことを、この本の包み紙で思い出したくらいだ

ああ、あの頃が懐かしい

 

ちなみにこの「下田書店」、調べてみたら現在はもう無くなっていた

思い出といっても、この本買っただけだけど、何だか感慨深い

 

 

ついでに包み紙も載せちゃおう

ジッドの似顔絵を描いたのは、購入した当時の俺

結構似てると思っていたんだけど、改めて見てみるとたいして似てないのな…

 

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さて『コリドン』は、男色擁護の書としてつとに有名で、同性愛者ジッドの1911年の作品である

副題は「四つのソクラテス的対話」となっていて、青年医師である男色者コリドンと異性愛者の同窓生「私」との対話形式で話は進む

 

哲学、生物学、古代ギリシャルネサンス期の諸芸術などを引き合いに出して、男色というものがいかに「自然」なものかを説明するコリドン

そしてその都度「んな、アホな」的な半畳を入れていく旧友

で、議論は平行線のまま終わる

 

 

ジッドは同性愛者でありながら、従姉を深く愛し、相思相愛の末に結婚までしている

それは肉体的交渉の全くない「白い結婚」であったというが、しかし一方では他所の女に子どもを産ませたりもしている

結局、コリドンが主張するような高尚な男色者ではなかったようだ

本人はどうやら誠実なつもりで、それなりに苦悩なんかしてるみたいなんだけど、でもまぁロクデナシですな

 

妻マドレーヌの気持ちを思うと不憫でならない

いくら精神的なものの優位だとか言っても、在り方としてはDVと何ら変わりない(セックスしない事をDVだと言っているのではない)

ジッドの誠実さなんて所詮、自分本位の自己欺瞞じゃないか

 

さてジッドの本業の方は、「純粋小説」だの「無償の行為」だのと、自意識過剰の小手先文学って感じがするけど、そんなところがかえって20世紀文学的で面白いのかもしれない

いずれ今後ますます読まれなくなるだろうけれども

 

 

映画『ボヘミアン・ラプソディー』を観て、ジッドの事を思い出した

そこで、新庄嘉章『天国と地獄の結婚』という本を再読

ジッドとマドレーヌの「白い結婚」について書かれた本だから

そしてそれが『コリドン』を読むきっかけとなった

文学より人物って感じのジッドだけど、またいくつか読み返してみようかな

 

 

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*1:現在の新潮文庫では神西清の単独訳となっている