ぱらの通信

思い付きと思い込みの重い雑感集

つぶれるまで 04:悪党列伝2

ひとつの出会いによって人生が大きく変わってしまった、というのは本やテレビの中ではよくある話だが、今回の主人公の身に起こったことは、正にそんなケースである
3代目バカ社長との出会いがなければ、この男の人生は、今ごろ全く別なものになっていたはずだからだ

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子分気質

 

社長のイスを継いだその男は、3代目バカ息子と同い年である

よって俺の10歳近く下の、20歳位で中途入社して来た後輩社員であった

洋楽好きで、俺とよくアメリカやイギリスのバンドの話をしたものだ

一度そいつの誘いで、隣県まで外タレのライヴに行った事もある 

その時はやがて結婚することになる女性も一緒だった

 

背のかなり小さなそいつは、小動物のように大人しい素朴なタイプの男で、人の後ろをちょこちょこ付いて歩くようなところがあった

それでも仕事の方はというと、飲み込みが早く、皆にそれなりに評価されていた

そして、その後入社して来たバカ息子に気に入られ、評価されて、やがて専務に抜擢されることになるのだ

 

 

スピード出世

  

専務になったのは、入社して5年目くらいではなかっただろうか

当然、社内では嫉妬や疑問の声が数多くあった

当時は既に社長となっていたバカ息子の決めたことだったので、特に摩擦が表面化はしなかったが

 

専務になってからも、俺との個人的な付き合いが無くなったわけではなかったが、以前とは人が変わってしまった様には感じていた

まず、そいつは結婚後半年ほどで社内不倫を始めた

それと、急に「上から」の態度をとるようになった

そして何より、こそこそ陰で何かをやっているような行動が目立つようになってきた

実際、後の経営破綻の事を考えると、本当にこそこそと裏工作などをやっていた事になるが

 

 

民事再生と社長就任

  

バカ息子の暴走で会社が経営破綻

民事再生の新体制で、「子分」は30代前半にして社長就任

のちに発覚するが、子分はバカ息子に対して、様々な便宜を図った上で、社長の座を譲り受けている

毎月100万程度の「仕送り」である

これは毎年2000万以上の弁済金がある会社でなくとも、相当に厳しい額である

それだけ売り上げが良かった会社であったと言えるのだろうが、結局これが命取りの第一歩であった

 

あのバカ息子の子分が実権を握るという事には、当然反発や懸念があったし、それをキッカケに退職する者もいた
しかしそれでも新体制の元で頑張って行こうという者が多かった

 

さて、その新体制だが、初めのうちこそ皆の力で、という雰囲気があったが、1年もしないうちに、とんでもない事になってきた

 

一つ目は、不倫相手の女性社員を現場の中心に据えてきた事だ

その不倫は謂わば公然の秘密であったのだが、当然社員はいろいろ忖度する事態となる

おまけにその女性社員は特に仕事ができる訳でもない上に、少々調子に乗りすぎるところがあった

 

二つ目は、ずっと社の売り上げを支えてきた、他の社員の3倍以上も売るベテラン社員を追い出したこと

理由は、社長である自分への敬意が足りず、何かと反対意見をしてくるので面倒臭くなった、というものだ

不倫相手の女も毛嫌いしていたということもあった

結局、そのベテラン社員は65歳の早期定年という形で辞めていった

 

三つ目、「上から」の態度はますますひどくなり、社員との関係は離れるばかりとなったこと

何かというと誰それは馬鹿だの、頭がいいだの言い出して、若い社員をやり込めたり、不快な感じがしたし、時に悪趣味に見えた

頭の良さとズル賢さをを混同していたのだと思う

余談だが、ネットが先生だった三流高校出身の子分は、ネット検索で得た知識を元に、策士ぶりを強調したり、やたら横文字を使ったりと、二流高校出身の俺にはちゃんちゃら可笑しくてたまらなかった…いや、勉強熱心なのはいい事だけどね

 

四つ目、後はお決まり、好みの女子社員にちょっかいを出したり…

 

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転落と末路ふたつ

 

だが、我が世の春を謳歌できたのも3年ほどだった

そんなデタラメな経営では売り上げが上がるわけもなく、各支払いがだんだんと厳しくなってきた

社員の給料をカットしたりなどしても追いつかなくなり、バカ息子への100万円が滞ってきた

 

将軍からの催促と恫喝は、まるでヤクザのようなものだったらしく、子分社長は鬱状態となる

結果、会社の役員や弁護士に打ち明け、どうにか将軍問題はカタをつけたようだ

もっとも、どのような解決だったのかはよく分からないが

 

しかし子分は外出することができなくなり、実家に戻って引きこもりになってしまった

そして哀れ、不倫相手だった女子社員は訳も分からず、別れを告げられることとなった

それが末路のひとつめ

 

というのは続きがある

子分は自宅療養を1年ほどしてから奇跡的に会社に復帰した

ずっと前に離婚していたが、復帰してすぐに別の新しい女性と再婚し、肩書きは役員のままだが、店に立ち、販売員として再スタートした

それについて俺は、もうこいつの事を責めるのはやめてまた一緒に頑張ろう、という気持ちになっていた

俺とは勤務場所が全く違ったものの、少しずつだが、また会話を交わすようになっていたのだ

 

しかしそれから2年ほど経った昨年の10月、突然倒れたとの報告が家からあって、そのまま現在に至るまで自宅療養を続けている

自殺未遂だったとの情報もあるが、よく分からない

突然何があったのかも分からない

それがふたつめの末路である