先日『神が愛した天才数学者たち』(吉永良正)を、とても面白く読んだ
数式はすっ飛ばして読んだけど
数学者っていうのは、例えば文学者などとは違って、生い立ちはあまり重要ではないだろう
だからその業績と無縁なところで関心を持つのは何だか邪道な感じはする
それ数学とは関係ないですよね、と言われたらスゴスゴと引き下がるしかないような…
ま、そんな事はさて置いて、興味を惹かれたのはダランベール
18世紀フランスの啓蒙主義とか百科全書とかで教科書に必ず出てくる、歴史的有名人ではあるが
ダランベールは捨て子であった
ただし両親は知られており、母親はタンサン侯爵夫人といって人気文学サロンの主催者でもある
不倫の末の私生児であり、育児を嫌った母親が教会に捨てたのだったが、その後に貧しいガラス職人のルソー夫婦に里子に出され(あのジャン=ジャック・ルソーとは無関係)、実の父親が教育費を支払っていた
後年、ダランベールが学界の寵児となった頃、生みの母親だと名乗り出て自分のサロンに招待したタンサン夫人に対して、「あなたは私を産んだ女性に過ぎません、私の本当の母親はただひとり、ガラス職人のルソー夫人です」ときっぱり招待を断ったという
また、論争相手の先輩数学者オイラーに対しても最大限の評価と敬意は変わる事がなかった
ダランベール(1717〜1783)
原作は梶原一騎で、アニメ版の最終回は記憶にないけれど、マンガ版の最終回なら知っている
どうしてこんな悲しい終わり方にするのか、とは思う
そして梶原一騎、詳しくは知らないけど、こんな終わり方にする印象がある
さてダランベール、36歳の時にレスピナスと言う22歳の女性と出会い恋に落ちた
そしてそれから約10年後にふたりは同棲する事になる
ところがこのレスピナスさん、若いスペイン貴族と恋仲になったり陸軍大佐と恋に落ちたりと、なかなか情熱的な女性だったようで…
ダランベールに看取られて彼女は息を引き取る事になるが、今際の際に呟いたのはかつての恋人、陸軍大佐の名前だったという…
それでもダランベールは深い悲しみの中で綴った、彼女に捧げるふたつの文章を残しているそうだ
結局は一生涯独身のまま65歳で没したダランベール
実の母親と唯一の恋人に裏切られるって、こんな悲しい事はない
最晩年のダランベールの胸に去来した想いはどんなものだったのだろうか
これらのエピソードにグッと来て、単純にもダランベールのファンになっちゃった
だからもうちょっと詳しく書かれた評伝か何かないかと探してみたけど、残念ながら見当たらない
有名人だから1、2冊くらい出ているかと思ったのに
(敬称略)