まだ会社は存続していている
ただ従業員全員のモチベーション低下は著しく、いまだかつて無い奇妙な自由を味わっている
こんなに自堕落でいいのだろうか、な〜んて思いながら
もう決着をつけなければいけない時期に入っているという事は全員理解している
ただ単に社長を甘やかしているだけなんだ
しかしここに来て予想もしていなかった事が起こっている
ケリをつける事を躊躇している社員がいて、それが足枷となってなってしまっているのだ
理由はよく解らない
何か個人的な事情でもあるのだろうか
例えば10月に貰うべき給料はまだ約4分の3ほどしか振り込まれていないが、その状態のまま11月も半ばまで来てしまった
取り敢えずは10月分だけでも終わらせよう、店の商品を処分して振り込ませよう、と言っても何故かそいつは乗ってこない
店の在庫が極端に減る事ではあるので、ある程度は全員の了解のもとでやるべきだろうと強引に進めることはしていないが
しかし本人は「もう帰りたい」とか「働きたくない」とか毎日朝からボヤいている
だったら早々に金を振り込ませて、さっさとケリをつけるべきなのに、それを思いとどまらせているのが何なのかがよく分からない
まだ取引先への支払いを気にかけているようだし、しまいには年末調整の事も言い出した
もう国の給料未払いに対する立替制度の限度である6ヶ月に達してしまったし、給料に当てるべき在庫商品ももう底をついてきた
客や取引先への申し訳なさはあるが、もう限界である
不義理は承知の上でオサラバするつもりだったではないか
それなのに建設的な話し合いができないばかりか、まだ社長や前社長のしでかした事を相変わらず非難しているのだ
金の不足分は社長と前社長が工面して出すべきだ、とまだ言っている
いつまでもそんな現実味のない事にこだわってなどいられないのに
ここに来て仲間割れみたいな事が起きようとは思わなかった
個々の事情があるのは当然とはいえ、それならそれで話してほしいところで、こちらもそれを聞き出すべきなんだろうが…
そんな訳で先月末あたりから予想外のストレスを感じている
俺は焦りすぎているのだろうか
ただ、これ以上の損をしたくないだけだ
俺だって無職になるのは怖い
と、そんなところにまた予想外の事が
社長が住民税9ヶ月分を未納したままになっていて、今年5月に退社した者が確定申告しようとしたらできなかったという
ま、そんな事は予想できた事ではあるんだけど…
予想してなかったのは住民税未納の場合、その支払い義務は社長ではなく社員だという事
完全にそれは社長の責任だと思い込んでいたからノーマークだったのだ
あの野郎、なんて爆弾を仕掛けてくれてんだよ…
我々の無知とはいえショックだった
他にも何かあるかもしれない
念のため社会保険未納の場合を調べたら、それは社員が払うものではないそうで安心した
しかしさすがにそれを聞いて、ケリをつけることに戸惑っていた奴も目が覚めたようだ
もうとっとと商品を売っ払って、早いとこ解決しちゃおうと意見がまとまった
でも目が覚めたって、大丈夫かな、あいつ、二度寝三度寝してる奴だからな…