この間、もうすぐ70歳だというお爺さんの接客をした
いやはやその爺さんよく喋る人で、地元の産業の事、政治の事、果ては自分がやっている仕事の事などを、1時間近くとにかく喋りまくる
詳しくはよく分からなかったけども、いずれ「貿易」というものをやっているらしい
高校を卒業して電器メーカーに勤めて、そのうち脱サラして商売始めて、知人の誘いでパチンコ屋の経営に関わって、現在は東南アジア諸国相手の貿易商だという
何の貿易なのかは分からない
とにかく景気のいい事をいろいろ話された
こちらも仕事だ
たいして興味のない事でも、笑顔で聞いている
時には、自分の思う事なんかを、それ風に言ったりする
ちゃんと聞いている事を示すためだ
その言ったことが、相手の気に入る場合がある
そりゃそうだ、反対意見なんかいう訳がない
俺が言ったことに返して来たら、またそれ風な事を言っておく
結局今回は名刺を貰い、もし関心があったら連絡してきなさい、みたいな事を言われたのだった
ずっと前、独身の頃だけど養子になって家を継いでくれないかと、老夫婦に言われたこともある
それにしても、一介の店員にそんな事を、もう少し慎重になるべきだろうに
親子関係が上手くいってないとの事だったので、俺の調子のいいトークが利いたのかもしれない
やんわりと断り続けていたら、もう言わなくなった
親子関係が修復できたのかもしれない
今はどうしてるんだろうか(もう亡くなったかもしれない)
不動産屋の社長に何故か気に入られて、あちこちに呼び出されてご飯をごちそうになったり、あれこれ頂いたり、もちろんこちらの取り扱う商品を買ってもらったり
ある日電話で、いい儲け話がある、一口10万円だ、と言われた
んな無茶苦茶な、と思って即座に断った
そしたら、怒るのなんのって、他の仲間に顔が立たないとかなんとか(知らんがな)
それを機に、縁が切れて、あぁ良かったとなった次第
そんな訳で俺は仕事柄、何となくそれ風な事をよく言う
分からない話題は何も言いようがないので頷くしかないのだが
それでも分かって聞いてるみたいに見えるんだろうか
タイトルはもちろん冗談だが、こちらにしたら相手が一体どこまで本気なのか分からない
先日、職場で地元の新聞社が取材を受けた
ざっくり言うと、現在行われている街の再編成による影響がどの程度あるのかという質問だった
それで、当たり障りのないそれ風な事を喋ったら、それが俺の名前入りで新聞に載ったのだ
さっそく取り寄せて、自慢気に家族に見せたのは言うまでもない
子供たちが、何だ写真は無いの、なんて言いやがる
お父さん位になるとな、写真なんかじゃなくて「言葉」が残るんだよ、と言ってやった
…何それ、意味分かんない、と反応は冷ややかだった