外国語の日本語表記は難しい
というより、本来そもそも不可能である
だから、その表記が定着するまで何年も要する訳だが、その不安定さは何故だか俺の野次馬根性を微妙に刺激する
代表的な例としては、何と言ってもドイツの文豪ゲーテ*1だろう
今でこそ「ゲーテ」で定着しているが、「ギョエテ」「ギョーテ」をはじめ、十何通りあるようだ
有名な川柳で「ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い」*2というのがあって、如何に現在の「ゲーテ」に定着するまで不安定なものだったかを伺わせる
これはゲーテが世界的な大文豪であったから研究者も多く、ずっと自説を曲げない学者が後を絶たなかった、という事になるんだろうか
一体いつ頃になって「ゲーテ」で定着したものやら
ここは非学問的な場なので、そこは各自でお調べいただきたい
と無責任な事を言ってお茶を濁すことにする
その他、思いつくところでは
シラーの「シルレル」、ヘルダーリンの「ヘルデルリーン」、シュティルナーの「スティルネル」、フッサールは「フッセル」などなど*3
ま、どれも主には「er」の処理問題なんだけど、それを「エル」とするところに時代を感じますな
実はこれ全部、古い岩波文庫での表記
明治以来、日本はドイツ系学問から学ぶこと多く、加えて後には三国同盟の影響もあってか更にドイツ系が重用され、結果たくさん訳されたのがそのまま残っている、ということかな、たぶん
ところで、ロックミュージシャンの名前表記も最近では見直されているようで、例えばカート・コバーン*4は「コベイン」だとか、ピーター・ガブリエル*5は「ゲイブリエル」とすべきだとか、ギタリストのジョン・マクガフ*6は「マッギオーク」と発音されるようだ、とかは以前も触れた
他にもイアン・マッカロク*7は「マカロック」なのか「マッカロック」なのか「マカロク」なのか、とか、レッド・ツェッペリン*8はやっぱり「ゼップリン」とすべきだろう、とかいろいろある訳だ…
以前ピーター・バラカンが、クラフトワーク*9を「クラフトヴェルク」とドイツ語読みしていたのを聞いた時は、ちょっとカッコいいと思った
本国ではそう呼ばれてるんだろうけど、イギリスじゃどうなんだろう
これらは、学問的問題ではないので、今後訂正されていくのかどうかは全く不明
別にそんなに拘らなくてもよさそうな気はするが
俺のように外国語が不得手な人間は特にそう思う
そういえば、これも以前に触れたことがあるが、オードリー・ヘップバーンの「ヘップバーン」はヘボン式ローマ字の「ヘボン」と、全く同じスペルなのだ*10
なるほど、「ヘップバーン」の本式発音は「ヘボン」と聞こえるんだろう
オードリー・ヘボンかヘップバーン式ローマ字か
その他、俺をを戸惑わせる日本語表記
例えば、リンカーンが「リンカン」になっていたり、ルーズベルトであったはずなのに、「ローズヴェルト(「V」の処理はいいとして)」とするのが最近は標準的だとか、『コーラン』はどうやら『クルアーン』と言った方がよさそうだ、などなど
マホメットを「ムハンマド」は分かるし、イスラム教を「回教」はやっぱり違うだろうし、イスラム教徒を「ムスリム」と言うのも問題ないけど、『コーラン』を『クルアーン』と言い替えることに意味あるのかな
アラビア語原文でなければ『クルアーン』を読んだことにはならないとされてるのに
いや、これは宗教問題だからいいか…
フィッツジェラルドの『グレート・ギャッツビー』の登場人物が「デイズィー」となっていたのは気になったし、ある本ではジェネレーションが「ジェナレーション」となっていたのには驚いた
初め誤植かと思って読み進めていったが、やっぱり出てくる「ジェナレーション」
どうやらこれは誤植でもなければ、俺の知らない単語でもなく、はっきりとジェネレーションの事のようだ
他にはプライヴェートが「プライヴィト」になっていたりする
なるほど、「ジェネレーション」の発音、「ジェナ」が近そうではある
デイジーだって確かに「デイズィー」がより近い
たぶん「ローズヴェルト」も「リンカン」もそうなんだろう
…なんかキザじゃないか?!
そりゃ原音に近い表記が理想ではあるが、定着してるものまで変えようとしなくても、と非学問的な立場の者としては思うな
アメリカ文化好きに多い印象あるけど、どうなんでしょうか
(敬称略)