1月26日、フランスの作曲家ミシェル・ルグランが亡くなった
享年86
ミシェル・ルグランといえば、日本では『シェルブールの雨傘』*1や『ロシュフォールの恋人たち』*2などの映画の音楽で有名だろう(いや本国その他でどうなのかは知らないが)
またピアニストとしてマイルス・デイヴィスと共演したジャズアルバムも制作しているし、またエリック・サティのピアノ曲を集めたアルバムも出しているし、おまけに歌まで歌ってるんだから、何でもやる人なんだろう
でもやっぱり映画音楽だ
フランシス・レイと並んで、日本で最も知られているフランスの作曲家だというのは、映画音楽がそれだけ印象深かったという事だ
上記映画のテーマ曲は超有名で、ミシェル・ルグランの作品かどうかなど関係なく知られている名曲である
俺が少しだけとはいえミシェル・ルグランを聴くようになったキッカケは、音楽を担当した映画、ゴダールの『はなればなれに』*3を観たからだ
いや、主演のアンナ・カリーナの大ファンになったからなんだけど、他の主演作で同じくゴダールの『女と男のいる舗道』*4の音楽もルグランで、これがまたいい
ヨーロッパ的な暗い曲調が、アンナ・カリーナの雰囲気にピッタリだった
いや、単にアンナ・カリーナが好きなだけかもしれないが
でもやっぱり極め付けはカトリーヌ・ドヌーブやジーン・ケリーが出演した、ジャック・ドゥミの『ロシュフォールの恋人たち』
そのサントラ盤は何度聴いたことか
俺ひょっとして当時、情緒不安定だったのかもしれない
それはミュージカル映画だから、出演者みんな歌いまくって踊りまくって、そういうのに慣れない俺など、初め何事かと驚いたものだった
ま、話そのものはバカバカしいくらいのハッピーエンドで、俺はそういうの嫌いじゃないから良かったけど、でもそれは音楽の力も大きかったんじゃないのかな
Michel Legrand 映画「ロシュフォールの恋人たち」 双生児姉妹の歌 Chanson De Jumelles
映画の中のほとんどすべての音楽を収録
個人的には、ミシェル・ルグランはフランスのバート・バカラックだと思っている*5
理由は、映画のために作った音楽がポピュラー音楽として聴かれている点が似ているからなんだけど、実はもうひとつ理由がある
それは歌声だ
ふたりともあんまり上手く聞こえない声で歌ってるんだけど、その歌声がダミ声に近い感じのなんとも言えない味がある
よせばいいのに、と思う人もいそうなんだけど、歌手が本業の人とは違う味わいなんだな
Trombone, guitare et compagnie, Michel Legrand (1964)
坂本龍一に言わせると、バカラックの歌声は作曲家特有の歌声なんだそうだけど、なるほど、そんな感じがするな、なんて妙に納得したが、ルグランもその系列だ
そして、坂本自身の歌声もヘタクソながらいい味を出していて俺は結構好きなんだ
ちなみに、妻に言わせるとYMOの3人は、単なる「歌いたがり」だそうだが…
なんて、色々知ってるかのように語ってきたけど、実際は相当な長い活動期間がある訳で、俺にはその全てを網羅する事は困難だ
とりあえず今は、ミシェル・ルグランが1960年代フランスの伝説的文化の立役者のひとりであったと確認する事で満足しておこう
ミシェル・ルグランよ安らかに、最高の音楽をありがとう
(敬称略)