俺が暮らしているところは、結構な田舎である
それでも県庁所在地なので、まあどうにかなっているのだが…
しかし、仕事で週に2回ほど行かなければならないその町は、一応「市」とはなっているものの、この後進県の中でも更に後進的な地域だ
そこでの仕事帰りはいつも、職場近くにあるブックオフに立ち寄るのだが、な、な、なんとそこでテリー・キャリアーの『What Color is Love』(1973年)を発見、購入、280円であった
こんな田舎にも俺の同志(もしくは先輩)がいただなんて
テリー・キャリアーとの出会いは割と最近の事で、3年前に有線で聴いたのが初めてだった
職場の有線チャンネルを「ソウル」にしてみたら、スモーキー・ロビンソンだのサム・クックだのオーティス・レディングだのに交じって、何やらソウル・R&Bとは異質な音楽が流れてきた
なにこれ、と思って調べてみると、曲名「Dancing Girl」、そしてテリー・キャリアーという初耳の名前
アコギ中心の9分もある大作で、爪弾くギターと囁くような歌声にストリングスが絡んで、徐々にグルーヴィーな展開となり、ヴォーカルもそれに応じて狂ったようなファルセットとなって、最後は嵐が過ぎ去ったかのように終わる
少し突飛な連想だが、ソロになってからのデヴィッド・シルヴィアンみたいな感じがしたし、あとこれも突飛ながら、テレビ『深夜食堂』の主題歌、鈴木常吉の歌う「思ひで」(名曲!)も思い出した
暫くしてからベスト盤を購入し、すっかり虜となった
他の曲では「What Color is Love」が「Dancing Girl」と同じ感触でシビれた
ちょっと驚いたのが、「Ordinary Joe」という曲
これは俺が10年くらい前に入手したコンピレーションCDの中に入っていた好きな曲だったのだ
歌っている人のことまで考えていなかったよ、一生の不覚
結果そのベスト盤にはかなり満足して、これは全キャリアを追いかけて行くべきだな、という気持ちになった
しかし、あれから早2年以上、俺のテリー・キャリアーはベスト盤のまま止まっていたのだ
そして遂に代表作を購入
しかもこんな田舎で
嗚呼、人生は思わぬところにラッキーが潜んでいるものだな、全く!
この度購入したCD、上記「Dancing Girl」も「What Color is Love」も収録されているのだが、なんと日本盤であり、帯には小西康陽のコメントも載っている
何故「なんと~」なのかと言えば、全然聞いたことのない名前で、一風変わった音楽の感じだったので、日本発売などされた事がないと思い込んでいたのだ
初めて聴いたのが有線だったというのも忘れて…
図々しくも、俺が発見発掘したシンガーソングライターかのような気になってたよ
小西康陽のコメントって…やっぱりそれなりの人だったんだね、納得
テリー・キャリアーは残念ながら今は故人である
1945年シカゴ生まれ(同郷のカーティス・メイフィールドやジェリー・バトラーとは幼馴染)
1965年にレコードデビュー、それから6枚のアルバムを制作するも83年に引退
しかし90年代より、アシッドジャズなどクラブシーンからの再評価で、98年遂にカムバック
テリー・キャリアーはカムバックしたわけじゃない
ずっと現役だったのをぼくたちが忘れていたのだ
小西康陽(帯のコメントより)
その後、数枚のスタジオアルバムとライヴ盤を制作、べス・オートンやマッシヴ・アタックらとのコラボなど精力的に活動した*1
2012年、癌により逝去、享年67
(敬称略)
*1:2004年と2009年には来日公演もあった模様 残念、観たかった…