ジェフ・バックリー『Grace』(1994年)を先月初めて聴いた
1994年にデビューして、その3年後の’97年に不慮の事故で死んでしまったジェフ・バックリーの、生前に発売された唯一のアルバムだ
物凄く良かった
死んで20年にもなり評価もあらかた決まったというのに、何を今更と言われると返す言葉も無いが
デビューが話題だったことも覚えているし、死んだということもリアルタイムで知ってはいた
でも『Grace』のジャケットが好きじゃなかったので長らく関心が持てなかった
そうこうするうち、どうやら名盤らしいぞと知ってからも、そんな「聴かず嫌い」は続いていた
そのジャケットのせいで、ロック雑誌『ミュージック・ライフ』風イケメン(美麗)ロッカーのMTV的なアメリカンロックを想像していたからだ
更に「天使の歌声」なんていう評判も俺にはマイナスにしか作用しなかった
とんだ偏見だった訳だ
これが問題のアルバムジャケット
さあ、いざ聴いてみたら想像してたのと全然違った
キラキラのロックンロールとアコギやピアノによるしっとりバラードみたいなものだと思っていたからだ
インディーロック辺りの影響が強そうなダークな曲調と、繊細なだけではないエレクトリック・サウンドの荒々しさがとてもカッコ良かった
なるほど、グランジの連中と同世代なんだなと、ひとり納得した
Jeff Buckley - Grace (Official Video)
感激して、さっそく『素描 (Sketches for My Sweetheart the Drunk)』(1998年)という没後発売の、製作中だったセカンドアルバムのデモ音源を聴いてみた
すると前作以上のダークさで、ちょっとこれじゃセールスは望めなかったんじゃないかな、なんて今更心配するのも変だが、そんなことを思いつつ、でもやっぱりカッコ良かった
しかもプロデュースがテレヴィジョンのトム・ヴァーレインだってのも、その時知って驚いた
その当時なんかもう、音楽雑誌なんて立ち読みすらしなくなってたから、全然知らなかったのだ
2ndアルバム・タイトル予定だった My Sweetheart the Drunk のスケッチ(素描)という意味のようだ
最近になって、デヴィッド・ボウイによる『Grace』絶賛の発言を見つけたりして、ああ、もっと早くに聴く機会があったのかもしれないな、と少し残念な気持ちにもなった
まあ、でも今が「聴き時」だったのかもしれない
それにしても’94年、27歳でのデビューは遅すぎる(もちろん、30歳での死も早すぎる訳だが)
カート・コバーン*1、ビリー・コーガン、スラッシュ、レニー・クラヴィッツなど同年代の連中は’90年前後にはデビューして(別に早すぎる訳でもない)、’94年頃にはある程度名を成しているが、彼らの活躍をどのような想いで見ていたのだろうか
また、カート・コバーンの死はどのように感じていたのだろうか
*1:余談になってしまうが、「カート・コベイン」と呼ぶべきだという声が少なからずある 確かに綴りが ” Cobain ”となっているので「コベイン」と読むのが自然であるだろう しかしまだ「コバーン」が一般的なようだし、そんな中「コベイン」とするのは何だかキザなので、この呼び名を使用する 他ピーター・ガブリエルは「ゲイブリエル」であるべきだ、とか 「ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い」という句もついでに紹介しておく