ぱらの通信

思い付きと思い込みの重い雑感集

江川卓についての覚え書き

とにかく江川が好きだった

俺の友達も、それぞれ贔屓のチームは違っても江川の事はみんな好きだった

プロ入団時の所謂「空白の1日」事件で、江川は日本中の怒りを買った格好となり、アンチ巨人以上にアンチ江川がいるかのような新聞やテレビの報道ではあったが、それでも俺の周りは江川ファンばかりだった

江川が嫌いだっていう人は一体どこにいたんだろう

 

 

江川は当時一番の速球投手であった

球速140km/h以上で豪速球と呼ばれていた80年代当時の日本球界において150km/hを超えるボールを投げていたのは江川の他に何人いただろうか

先発しての9回に150km/hのボールが投げられるのは江川だけだ、などという称賛の声がファンの間ではあがっていた(一方では9回になっても150km/hの球が投げられるのは手を抜いていたからだという批判もあったが)

 

 

 

江川が投げる試合は早く終わる、というのは有名で、実際にテレビの野球放送はその頃は基本21時までで、殆どは試合途中で放送が終わってしまうのだったが、江川の試合は大抵20時半には終わってしまうので、江川のヒーローインタビューが見られるのも嬉しかった

 

更に有名なエピソードとしては、81年に最多勝を始め投手のタイトルを総なめしたにもかかわらず、当時はスポーツ記者が決めていた沢村賞を、好感度が悪いせいで獲れなかったという話

 

なにしろあの頃はテレビで、野球解説者にまでも「江川は大した事のない投手だ」などと言われていたし、また江川がいかに狡い人間で悪い奴か、なんていう本が何冊も出版されるくらいだったから

 

今じゃこんな事はちょっと考えられないし、恐らく許されない事では思うが、反面、そんな扱いが他の野球選手とは異質な江川の強いキャラクターを作ったのだろう

有名な言葉をもじって言えば、江川は江川に生まれず、江川になったのだ、といえるのかもしれない

 

 

 

もちろん現在の大谷翔平ダルビッシュなどの数値と比べると見劣りするであろうが、スポーツは何かと相対的なものであり、そこだけ今と昔を比べる事自体無意味である

まして速度というものは体感と大いに関係するものであるから尚更だ

まあそんな言わずもがなの事はこの位にしておいて…

 

しかし実際に江川は大した記録は残しておらず、プロに入ってからは完全試合ノーヒットノーランもしていないし、実働9年で135勝しかしていない、せいぜいが84年オールスター戦での8連続奪三振くらいのものではなかろうか

なので我々、江川の現役時代を知るものが、江川伝説を語り継いでいかなければいけない義務があると考える

何も残さなかったソクラテスプラトンが後世に伝えたように、またイエス=キリストの言行録を残した福音書記者たちのように

 

 

そんな訳で、江川本の紹介をしていこう(残念ながらほとんど絶版状態だが)

 

 

まずは江川自身による江川解説本

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引退前に刊行されたもの(この文庫版は引退後の刊行か?)

江川ってヤツは… (文春文庫)

 

 

なんと本宮ひろ志の漫画全3巻

実録たかされ 2 (BiNGO COMICS)

 

 

 

 

単行本『どうしたってプロ野球は面白い』を改題した文庫版

こちらも引退前のリリース

江川は少し触れられているだけだが、それでも破格の扱いとなっている

草野進=蓮實重彦だとか…?

世紀末のプロ野球 (角川文庫)

 

 

あとはご存知Numberのバックナンバー各種

ここでは俺が買い逃してしまったものをあえて載せる

友達が発売後すぐ購入、俺もと思って書店に行ったらもう売り切れていた

そして残念ながら今も持っていない

Number (ナンバー) 1984年 8月20日号 豪速球・江川卓の伝説 (Sports Graphic Number)

 

 

 

さっきは我々現役時代を知るものが〜なんて言ったが、とっくに江川と同世代の方々が十分すぎるほどにその任を果たしてくれている

その関わり方は様々であるが、江川を語りながら自分を語り、自分を語って江川を語るという風だ

彼らの人生に、江川がどれほどの衝撃をもって入り込んできたのかという事を、それは物語っている

おそらく彼らの中に刻まれた江川は永遠に消える事などないのだろう

江川恐るべし

 

 

(敬称略)