ぱらの通信

思い付きと思い込みの重い雑感集

つぶれるまで 05:悪党列伝3

現社長にも、守りたいものがあるだろう、それは当然だし、理解し同情もする
しかし、現在の状態を作り出した原因の一端は自分にもある事を忘れてもらっては困る
決してバカ息子とその子分のせいばかりではないのだ
 
そして、重大な事を隠して、結果的には社員を騙すようなかたちで、生活を犠牲にさせた事は決して許される事ではない
こればっかりは現社長の責任である
  
 
 
爺さん
 
今の社長は、十数年前に経理として入社してきた地方銀行OBで、支店長もしていたという、現在は八十歳を過ぎた爺さんだ
経理としてと言ったが、知らぬ間に(最初から?)役員となっていたので、バカ息子が新事業立ち上げで融資を受けるため、銀行へのツテとして雇ったのかもしれない
 
実のところ、俺はバカ息子の下でやっていた頃の爺さんの事をよく知らない
俺は店長という事になってはいたが、上層部での事情などに関わる筈もない
よって爺さんの以前の経歴はこれくらいしか分からないので、現在の姿をご覧頂く事になるが、しかしそれで十分だと思う
多分だが爺さんには、大した裏なんかは無いだろうから
 

 

 
無策の人

爺さんが社長に就任したのは今から約5年前の事だ
しかし残念な事に経営者向きの人間ではなかった
能力ばかりか理念も覚悟も無く、そのため殆ど無策のまま年月が過ぎてしまった
数人の取締役員はいたが、所詮は社員上がりの名ばかり役員で、あまり頼りにならず、実際爺さんは大して相談もしなかったようである
それらの事に我々社員が気付いたのはようやく昨年になってからだが、それも呑気な話であり、社員の質もまた推して知るべしであるが、もう既に後の祭りといった状態であった
 
そもそも爺さんにバトンが渡された時点で、経営状態は良くなかったはずなのだが、それに対してはあまり心配はしていなかったらしい
むしろ、かなりの売上高の会社だったので高を括っていたようなのだ
しかしやがて現実を知る事になる


 

 

青天の霹靂

 

我々は知らなかったが、実際の所は各取引先への支払いはかなり厳しい状態であったらしい

毎月の支払いの他に、民事再生の弁済があったからだ
それはあと3年ほどで終わる予定であったのだが


ある年末の事だが、給料がその月内の全額支給ができない為、残りは来月に振り込みます、といきなり全店に連絡が来た
ある取引先への支払いが期日までできなかったからだが、それはその取引先の担当者が「社員の給料を止めてでも払え」と爺さんに言ったからなのだった
我々社員には民事再生の弁済のためなので、協力してほしいと説明があり、当然のように我々は、それならば仕方ないと我慢したのだったが…

これらの事実を知ったのも去年である
それ以降、給料は半分ずつの月二回の分割支給となり、年に二、三度は半月分の振込しかないような事になってしまった
結果、現在までで4ヶ月分が遅配となっている
 
 

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困った男

取引先への支払いはひどいものである
いや、金が無いのだから順調に支払いができないのは仕方ないとしても、数万円や数千円程度ですら支払わず、ずっと滞納してしまうのだから、何社かには取引中止、あるいは現金取引にされてしまった
その位の金額なら自分の金で立替えればいいのにと思うのだが
社員の給料以上の年金を貰っているはずなのに、何故かそんな気にはならないらしい
 
現状を考えると取引が無くなったり、現金取引になったりするのは、ある程度仕方ない事だが、その数が増えてくると業務に支障が出てくるし、信用も失い、経営難の噂も広まる事になるが、そんな事に爺さんは頓着しない
 
取引先に支払えない旨の電話をする場合は、いかにこの会社に金が無くて経営に苦しんでいるかを、何もそこまで細かく言わなくてもと思う位に説明して、泣き落しで許してもらおうとする
また先の、社員給料を止めてでも払えと言った取引先には、毎月毎月売上報告をさせられて馬鹿正直に提出している始末
爺さんには、もう恥も外聞もない
それが未だ倒産せず存続できている理由の一つだとは思うが、そろそろもうこの手も通用しない
我々社員までも取引先の人間に、侮辱的な言葉を吐かれたりすることもある
売るための在庫商品が仕入れられなくて、店はみすぼらしい状態だ
最終的な決断をしなければならない時は刻々と迫っている
 
 

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爺さんにも、守りたいものがあるだろう、それは当然だし、理解し同情もする
しかし、現在の状態を作り出した原因の一端は自分にもある事を忘れてもらっては困る
決して前社長のせいばかりではないのだ
 
そして、重大な事を隠し、結果的には社員を騙すようなかたちで生活を犠牲にさせた事は、決して許される事ではない
これは誰でもない、爺さんの責任である