ぱらの通信

思い付きと思い込みの重い雑感集

こんなの読んでていいのかしらん あるいは好色文学叢書「ロマン文庫」の思い出

この前、新刊を販売する普通の書店に立ち寄った時に、蓮實重彦(はすみしげひこ)の小説、『伯爵夫人』が文庫になっているのを知った

この作品、2006年に三島由紀夫賞を受賞した際、作者の弁が少し話題となったのは覚えていた

ま、別に読むつもりも無かったから、そんな事はどうでもよかったのだが、あの蓮實重彦が小説を書いたという事に俺は少なからず驚いたのだった

 

何でまた今になって小説なんかを、と思った訳で、しかも『伯爵夫人』なんていう俗物的というか時代錯誤的というか、そんなタイトルにも何となく違和感を持ってはいた

 

さて、手に取って冒頭の箇所を少し立ち読みしてみると、これまた予想もしていなかった強烈な文言が並んでいる

学者の家に生まれ、幼少より学習院に学び、後には東大の総長までも務め、また浅田彰をして「貧乏人は蓮實の真似はするな」とまで言わしめたスーパー・ハイソサエティがこんなことを書いていたのか、と俄かには信じられなかった 

とか何とか言いながら、すぐにその文庫本を購入、家でゆっくりと向き合うことに

 

 

舞台は戦前の日本

大受験を控えた主人公の二郎とアラフォーと思しき伯爵夫人との関わりや、伯爵夫人の色々な男たちとの交わりを綴ったもので、いわゆる「教養小説」的というか『感情教育』的というか、そんな感じだが、一体これは何の話だろうと思っているうちに最終章に到達

えっと、これはどう考えたらいいのかな

 

ところでこれはアンチ三島小説なのか、でも今さら三島由紀夫にアンチなんて言ってもな、なんて余計なことまで考えてしまった

 

とはいえ、表面的には始め予想されたような難解さは全く感じられず、少しスパイ映画のような雰囲気もあって、さらっと好色小説として楽しんでもバチは当たらないだろう

また作中に頻出する「巴丁巴丁(バーデンバーデン)」「聖林(ハリウッド)」「哈爾浜(ハルビン)」「緬甸(ビルマ)」など、わざわざ漢字で表記される地名やその他諸々の名称も一興である

 

でも、ホント、その文章はここに書き写すのが憚られるほどの開けっぴろげな淫らさがあって、当ブログの読者の方々からは確実にお叱りを受けるであろうレベルである

よって、それは皆様各自で書店にてご確認頂きたい

 

それにしても、こんな荒唐無稽のポルノ小説(失礼)を、いくら三島賞受賞の「純文学」作品だとはいえ、いい歳した男が真面目な顔して読んでるのってどうなんだろう

 

 

伯爵夫人 (新潮文庫)

 

 

さて、好色文学なんてものを読んだのは本当に久しぶりだが、昔は澁澤龍彦中村眞一郎の影響などもあり(もちろん元からの助平ゴコロは大前提ですが…)、あれこれ読んだりしたものだ

 

澁澤翻訳のサド侯爵や『O譲の物語』辺りがキッカケで、「好色文学がフランス革命を用意した」*1とか「ディケンズには決して書かれていないヴィクトリア朝の裏側」*2などの文句にも大いに刺激された

それに20世紀の文学は「性」と「時間」がテーマだ、とかなんとか読んだりすると、もう後ろめたさもどこへやら

 

そんな興味深い欧米中心の好色文学叢書として、かつて富士見書房の「ロマン文庫」というシリーズがあった

上記のサドやポーリーヌ・レアージュもこのシリーズに入っていたし、18世紀や19世紀の地下文学も多く選ばれていた

そしてそれは、表紙のほとんどが金子國義の絵が使われており、とても妖しくオシャレでカッコよかったのだ

 

f:id:s-giraffeman:20190125000248j:plain

俺の友達は高校生の頃、金子國義の表紙だというので、この「ロマン文庫」をいろいろと買い漁っていた

右下のコラージュ作品も金子國義によるもの

 

 

この「ロマン文庫」は随分前に絶版となっていて、昔ながらの古本屋などでは見かけるけど、ブックオフみたいなところではほとんど見ることがないな

 

こういうのを文庫でカッコよく売るってのは、今はもう流行らないのだろうか 

ま、エロってところに焦点当てると、どれもこれも似たようなストーリーではあるけどさ

でも、こんな骨董ポルノってのも、独特の趣があって面白いと思うんだけど

女性蔑視の「差別小説」だから一般書店では買えない、なんてことになったりして

 

(敬称略)

 

*1:ボードレール

*2:出典、正確な字句は忘れた