今から28年前の1990年の事だったはずだ
東京の友達のところへ遊びに行き、夜は二人で居酒屋で飲み、それからカラオケに行こうとなって、池袋にあるカラオケ・スナックって言うのか、そんなところへ入った
その頃はもう、カラオケ・ボックスってものが既にあったが、他の客と順番でマイクを握る方式の、カラオケ・スナックというものがまだまだ多かった…と思う
その店はスナックといっても結構の広さがあって、30坪くらいはあったと記憶するが、テーブルも10卓以上はあったと思う
歌うステージは入口と反対の壁側に作られていて、客のテーブルに向かって歌う事になる
昔、カラオケっていうとこんな感じの店ばかりだったけど、いま思うと歌うのに勇気がいるね
でもみんな酔っ払って歌うわけだから、あんまり関係なかったかな
それにカラオケ・ボックスと違って、歌いたくなければ歌わなくても別にいいし(だって基本は飲み屋だから)
で、そんな店に入ったわけだけど、二人して既に酔っ払った状態であり、またその店でも飲んで、歌って、喋って、かなり上機嫌となっていた
隣には俺たちと同世代(二十代半ば)のサラリーマンが三人いて、彼らも当然歌っていた
俺たちは前述の通り、かなり上機嫌なものだから、隣の彼らにも声援を送り、一緒になって歌ったりして、すっかりと意気投合した
そこへ赤いジャケットを着た、これまた我々と同世代らしき男がひとりで店にはいってきた
そいつは当時ヒットしていた「愛は勝つ」のKANにどことなく似た男だった(だから1990年だったかなと思う)
で、そのうちそいつにも声援を送り、やがて意気投合して、「愛は勝つ」を(間違った)英訳で「love is win、love is win」などと連呼してリクエストして歌わせ、その日出会ったサラリーマン三人組とKANと俺たちは大いに盛り上がった
その夜の我々の合言葉は「love is win」であった
やがてサラリーマン三人組が帰るという
もう結構いい時間だったのかもしれない
その三人組が会計を済ませて、店から出ようという時、このうちの一人と俺たちは、またこの店で会おう、と握手を交わし、肩を組んで別れを惜しんでいた
すると連れの二人が急に、もういい加減にしてくれ、と俺たちを引き離してそいつを連れて帰ったのだ
えっ、今までの盛り上がりは何だったの…
あんまり覚えてないけど、盛り上がってたのは、三人全員じゃなくて、そいつ一人だけだったのかもしれない
俺たちはキョトンとしちゃって…
それからどうしたかは記憶にない
(敬称略)