ぱらの通信

思い付きと思い込みの重い雑感集

観戦者側の勝手な想い あるいは里谷多英

平昌オリンピックが始まった

個人的には羽生結弦が気掛かりで、ケガの回復がどの程度なのかは分からないが、どうか無理はしないでくれよという気持ちと、連覇はもちろんだが誰にも手の届かないところにまで行ってほしいという気持ちが交錯しているのは大多数の方々と一緒であろう

彼の場合は本当に無茶をしかねないところがあるし実際その前科もあるが、どうかこの不世出のスーパースターが悲劇のヒーローにだけはならないよう祈るばかりだ

 

 

という訳で里谷多英である

女子モーグルで1994年リレハンメルから2010年バンクーバーまで5大会連続出場し、長野(’98)で金、ソルトレイクシティ(’02)で銅と、2大会連続でメダルを獲得したレジェンドだ

 

ちなみに長野での金は冬季五輪での日本女子史上初であり、今でも金メダルを獲った女子は里谷と荒川静香だけだ

ついでに書いておくと、ソルトレイクシティの時は、日本のメダル獲得数は全部で2個、清水宏保の銀と里谷の銅だけだった

そしてなんと言っても、冬季五輪で2大会連続でのメダル獲得者は女子では現在のところ里谷多英だけである

 

 

しかし残念ながらその栄冠にふさわしい待遇を受けているとはお世辞にも言いがたく、テレビ出演はもちろん過去の映像すら滅多に流れる事はない

ここ何回かの冬季五輪の女子といえば注目は浅田真央であったし、モーグルでは常に上村愛子にスポットライトが当たっていた

もちろん里谷本人にもその原因はあった訳だが…

 

 

f:id:s-giraffeman:20180210072633j:plain

(山本雅彦氏撮影)

 

 

里谷ファンの間での語り草といえば、2010年バンクーバー決勝、ものすごい勢いでの滑降後に第2エアで転倒、結果19位ではあったが、勝利をもぎ獲るため一か八かで果敢に攻めていく姿はメダル獲得の時以上の興奮と感動を我々に与えてくれた

 

 

本人はバンクーバーでの事に特別な想いは無いようだが、そこにアスリート自身の感覚と我々素人の感覚にしばしば起こる食い違いが生じているみたいで面白い

スポーツ競技では、しばしば物語や詩情が生まれたような感じを観戦者側は受けるが、当の競技者本人には全く与り知らぬ事だという

 

スポーツにはどうしても勝ち負けや順位が付きものであり、時には残酷にさえ感じられる程だが、しかしアスリートたちは基本その勝負の中でだけ存在し、また勝利にしか意味がない

我々のように敗北にまで感動してしまう事というのは、最早スポーツとは別のものであろう

 

しかし逆説的だが、だからこそ感動は深まるのではないのか

鳥はただ鳴いているだけで唄っているわけではない、みたいなね…

なんて、分かった様な分からない様な事言うのはこれ位にしておこうか

 

 

現在里谷多英はフジテレビに勤務しているという(どんな部署なのかは不明、ただスキーとは関係ないようだ)

ソチ五輪の時は、深夜のバラエティ番組に女子モーグルの解説者として出て来たのでびっくりしたが、なるほどチャンネルは8だった

でも考えてみるとフジの社員である以上、フジ以外の番組に出るのは不可能だという事か、残念

まさかメダル獲得時の映像も流せないって事はないと思うが…

 

 

2013年の里谷多英の引退会見で上村愛子が「(里谷は)ずっと越えられない壁だった」という言葉を贈っている

上村にしてみればオリンピックでのメダルこそ獲れなかったものの戦歴の上では里谷より上であるという自負があった筈だが、それでもレジェンドたる里谷を一番よく知っていた者による素直な言葉であっただろう

 

 

 

(敬称略)